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第3課 危ない兆候

危ない兆候は、一期の数字より前期からの変化に出ます。回収・在庫・支払いの日数と、借入の重さを並べて見ます。

例に使う「サンプル商事株式会社(架空)」は卸売業の架空の会社で、得意先の「甲社(架空)」「乙社(架空)」「丙社(架空)」も、決算書と取引の数字もすべて架空の数値です。実在の会社や取引とは関係ありません。金額は百万円です。

前期から当期への変化を見る

一期分の数字が悪くなくても、前期から当期への変化に危ない兆候が出ることがあります。特に次の五つは、取引先の資金繰りが苦しくなりかけているときに出やすいものです。

  1. 売上債権回転日数が伸びる:売ってから回収するまでが長くなっています。回収の遅い売り先が増えたか、取りはぐれている売掛金があるかもしれません。
  2. 在庫回転日数が伸びる:売れない在庫が積み上がっているか、売上の見込みより多く仕入れています。
  3. 短期借入への依存が強まる:運転資本の膨らみを短期の借入で埋めています。有利子負債を月商で割ると、借入が売上の何か月分かが分かります。
  4. 仕入債務回転日数が伸びる:仕入先への支払いを引き延ばしている兆しかもしれません。サンプル商事も仕入先の一つです。
  5. サイト延長の要請・支払遅延:決算書より先に、取引の現場に出る兆候です。
売上債権回転日数 = 売上債権 ÷ 売上高 ×365
在庫回転日数 = 商品・製品 ÷ 売上原価 ×365
仕入債務回転日数 = 仕入債務 ÷ 売上原価 ×365
有利子負債の月商倍率 =(短期借入金 + 長期借入金)÷ 月商(売上高の十二分の一)
債務償還年数 = 有利子負債 ÷(当期純利益 + 減価償却費)

回転日数は期末の残高で計算し、日の単位で丸めています。債務償還年数は、利益と減価償却費の和がマイナスのときは出せません。

三社の推移

前期 → 当期
売上債権回転日数(日) → → →
在庫回転日数(日) → → →
仕入債務回転日数(日) → → →
短期借入金 → → →
有利子負債の月商倍率(か月分) → → →
債務償還年数(年)
支払遅延(直近一年、回)

:売上の伸びより速く膨らむ

売上高は 倍ですが、売上債権は 倍、在庫は 倍です。売上債権回転日数は 日、在庫回転日数は 日伸び、短期借入金は から 百万円に増えました。サイトの延長を求めているのも、この流れの中です。

:売れないのに回収が遅い

売上高は減っているのに、売上債権は増え、売上債権回転日数は 日伸びました。仕入債務回転日数も 日伸び、支払遅延が 回あります。支払いを引き延ばしてしのいでいる形です。

動かしてみる:指標を選ぶと三社の推移が出る

甲社乙社丙社

の線はほぼ水平です。危ない兆候は、一つの数字の高い低いより、線の傾きに出ます。