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利益が出ているのに現金が減る:架空の会社の3期分の数字で追う

「今期は増益なのに、なぜ預金が減っているのか」。決算の数字を見て、こう感じる場面は珍しくありません。ここでは架空の卸売会社「サンプル商事」の3期分の数字を使って、利益と現金がずれる理由を順に追います。会社も数字もすべて説明用に作った架空のもので、単位は百万円です。

3期分の数字

第1期第2期第3期
売上高5,6006,5005,900
当期純利益12024070
期末の現金預金500440530
現金預金の増減—−60+90

第2期は売上が伸び、純利益は120から240へ倍になりました。ところが現金預金は60減っています。第3期は在庫の評価損を出して純利益が70まで落ちたのに、現金預金は90増えました。利益と現金が、逆の方向に動いています。

現金を吸い込んだもの:売掛金と在庫

ずれの大きな原因は、B/S(貸借対照表)の三つの残高です。

第1期末第2期末第3期末
売上債権(受取手形・電子記録債権・売掛金)1,5201,8301,620
在庫(商品)7501,050800
仕入債務(支払手形・電子記録債務・買掛金)1,3001,3701,270

第2期に売上債権は310増えました。売上には計上したのに、まだ代金を回収していない分です。在庫は300増えました。仕入れて代金を払ったのに、まだ売れていない分です。一方で仕入債務は70増えました。こちらは仕入れたのにまだ払っていない分で、現金を手元に残す方向に働きます。

差し引きすると、310+300-70=540。売掛金と在庫に、540百万円の現金が寝てしまったことになります。この「売上債権+在庫-仕入債務」を運転資本と呼びます。

第2期の営業キャッシュフローを組み立てる

キャッシュフロー計算書の営業CFは、純利益から出発して、現金が動かなかった分を直していく形(間接法)で作れます。第2期は次のとおりです。

項目金額
当期純利益240
法人税等を足し戻す110
減価償却費を足し戻す70
売上債権の増加−310
在庫の増加−300
仕入債務の増加70
法人税等の支払額−80
営業CF−200

減価償却費は費用ですが、その期に現金は出ていないので足し戻します。税金はいったん足し戻し、実際に払った額(P/Lの法人税等110から未払法人税等の増加30を引いた80)を引き直します。

増益の年でも、営業CFはマイナス200でした。ここに設備の支出(投資CF)の80が加わり、足りない分は短期借入金を300増やして埋めています。長期借入金の返済50と配当30を差し引くと、財務CFは+220。合計で-200-80+220=-60となり、現金預金の減少60と一致します。

第3期は逆回転

第3期は売上が落ち、在庫を圧縮しました。売上債権は210減り、在庫は250減りました。どちらも、寝ていた現金が戻ってきたことを意味します。仕入債務は100減り、これは支払いで現金が出た分です。

純利益は70しかありませんが、運転資本が360減った効果で、営業CFは+450になりました。その現金で短期借入金を250返し、それでも現金預金は90増えています。

読み取れること

  • 利益は「稼いだ額」、現金は「手元に残った額」で、売掛金・在庫・買掛金の増減の分だけずれる。
  • 売上が伸びる時期は、売掛金と在庫も膨らみやすく、黒字でも現金が細る。借入で埋めることになり、支払いの期日に現金が足りなければ、黒字でも資金繰りに行き詰まる。
  • 減益の年に現金が増えたときは、在庫を減らした、回収が進んだなど、運転資本が縮んだ結果のことが多い。増えた現金がずっと続くとは限らない。

利益の増減だけでなく、売上債権・在庫・仕入債務の残高が前期からどう動いたかを並べて見ると、現金の動きの大半は説明がつきます。

この記事の数字は、キャッシュフローの読み方 練習帳と同じ架空の会社のものです。練習帳の第1課から第4課までは無料で読め、間接法の組み立てや、運転資本を動かしたときに営業CFがどう変わるかを、画面上で数字を動かして確かめられます。B/Sから順に読みたい場合は、決算書練習帳シリーズの案内に読む順をまとめています。

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